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2011年5月 のアーカイブ

2011.5.24

6月病

新入生や新入社員が厳しい受験戦争や就職戦争を勝ち抜いて意気揚々と4月に学校に入学したり会社に入社するのですが、約1ヶ月後にその緊張の糸が切れてホッとするような時期に心身の疲労がどっと出て生活全般が無気力で憂鬱な気分になってしまい、一過性の軽症のうつ状態に陥ってしまうことがあります。このような状態を精神科専門用語ではなく俗語ですが「5月病」と言います。自然経過で症状が軽快する場合は問題ないのですが、うつ状態や不安状態や不眠で勉強や勤務が継続して困難になる場合は心療内科での適切な診断や治療の対象になる場合があります。また新入社員において4月に1ヶ月間の新人研修を経て5月に実業務を開始しその業務ストレスや対人ストレスが蓄積した1ヶ月後の6月に心身の不調が現れることをこれも俗語で「6月病」と言います。「5月病」も「6月病」も精神科診断的には「適応障害」であることが多いように思いますが、うつ病や気分変調症等の感情障害の発症やパーソナリティ障害等の元来の人格や性格の問題の反応症状である場合もあるので安易な自己診断は危険です。新入社員だけではなくすでにキャリアのある社員であっても4月や9月は異動や転勤の時期なので、その1~2ヶ月後の5~6月や10~11月は職場の勤務環境変化に伴う業務内容ストレスや対人関係ストレスについていけずにメンタル不全を発症し、うつ状態、不安状態、不眠、身体不定愁訴(頭痛、肩こり、めまい、吐き気、胃痛、下痢、動悸、発汗、息苦しさ等)が出現し、勤務や出勤が困難になり心療内科を受診したり休職せざるを得なくなる場合があります。ストレスを早期に自己察知してうまく日々の気分転換を心がけて十分な睡眠や食事を確保し、もし自己解決が出来ない場合は直属の上司や産業医に相談して問題の解決を早期にはかることでメンタル不全の発症の早期予防に繋がると思います。



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同じ社会的状況でも同じ対人関係でも「前向き」に考えるのと「後ろ向き」に考えるのとでは日常生活におけるストレスの感じ方や気分の状態には大きな差が出ます。よく持ち出される有名な例えに「コップ半分の水」があります。「もうコップの中には水が半分しかないじゃないか・・・」と考えればネガティブ思考で悲観的かつ後ろ向きで気分が暗くなり無気力にもなりがちですが、「まだコップには半分も水が入っているじゃないか!」と考えればポジティブ思考で楽観的かつ前向きで気分が明るくなり意欲的になりやすいと思います。状況は全く同じなのに人間の考え方ひとつで人間の気分というものは変わるものなのです。このような前向きのポジティブシンキングの考え方を自分自身で体得できれば日常生活内で感じるストレス量が減り気分の憂鬱感や無気力感を感じる程度も減るかもしれません。どんなに自分で努力しても前向きにならないような場合は元来の性格や人格や生育歴やうつ状態の有無を確認し、治療上必要であれば薬物療法の適応になりますが、治療が奏功したとしても薬物療法だけではなく限られた診療時間内であっても精神療法や生活指導を行い、考え方の修正や生活上のアドバイスを適宜行っていくことで患者さんのQOL(生活の質)を高めていくことが出来るのではないかと思っています。

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職場内での発言や行動、または職場内での対人関係がうまくいかずに就労困難に陥る精神科疾患の中に「広汎性発達障害」があります。不注意・衝動性・多動性を主症状とした「注意欠陥多動性障害(ADHD)」、知的発達の遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する等の特定の能力の習得と使用に困難を示す「学習障害(LD)」は子供の頃から症状を抱えていて学童期に発見されやすい病気です。しかし当初は言葉の発達に遅れがあるもののやがて言語能力が発達して知的障害を伴わなくなった「高機能自閉症(自閉症の2割)」、言葉の発達に遅れがなく知的障害もなく社会性の欠如、コミュニケーション能力の欠如、興味の偏りを主症状とした「アスペルガー症候群」、またアスペルガー症候群と同様の特徴を持ち診断基準を満たさない「典型的ではない広汎性発達障害(PDD-NOS)」は子供の頃は自分では違和感を感じつつも発見されず成人してから社会生活や就労に問題を抱えてはじめて発見されることがあります。この中で「アスペルガー症候群」を例に挙げると3つの大きな特徴があります。<①社会性の欠如(集団の場の空気や相手の感情を読むのが苦手、会話はひとりで一方的にしゃべりがち、ひとりを好み他人への関心が低い、相手の表情や態度や行動への対応法がわからない)②コミュニケーションの障害(文言通りに言葉を受け取りたとえ話や冗談や皮肉はわからない、感情表現が苦手で流れに無関係な発言をする)③反復行動と狭い興味(同じ行動を反復しやすい、同じ状況を好み突然の変化でパニックになりやすい、特定のものに執着し全体が把握できない、同時進行が苦手)>このような症状で悩んでいる場合は地域の政令市や県の発達障害者支援センターに相談するのが一般的ですが、広汎性発達障害の「診断」を行ったり、「2次障害(うつ状態、不安状態、不眠等)の治療」を行ったり、「各種診断書の作成(精神障害者保健福祉手帳や自立支援医療意見書)」を行うのは、成人の広汎性発達障害に精通した精神科医療機関の仕事です。医療機関にうつや不安や不眠を主訴に受診し診察を受けた結果、広汎性発達障害が見つかる場合もあります。このように精神科や心療内科の鑑別診断において広汎性発達障害を見逃さないことは今後の治療や援助の方針決定において非常に重要であると言えるでしょう。

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慢性的に業務多忙で帰宅時間が遅くなり慢性的に寝不足となってしまい、心身の疲労感が日々蓄積して就寝しても週末を過ぎても疲れが抜けない状態になることがあります。具体的な症状は全身がだるい、首や肩や腰のこりや痛み、頭痛やめまい、胃もたれや下痢や便秘、気分の落ち込みや無気力感、不安感や動悸や息苦しさ、ソワソワ感やイライラ感、不眠などの症状です。実際に具体的な職場内のストレスがなくても慢性疲労蓄積でこのような状態に陥ることがあり、すべての方ではありませんが生活習慣の改善で症状が軽減できるケースもあります。まず十分な睡眠時間を確保することです。365日の心身疲労の蓄積を回避するには最低1日6時間は十分な睡眠時間を確保したいところです。安定剤や睡眠薬を飲むときはアルコール摂取は禁忌ですが、一般の方が飲酒で睡眠を確保している場合に慢性的に眠りが浅くなったり夜中に何度も起きてしまうような状態はアルコール自体の眠りを浅くする作用が出ている場合やすでにうつ状態に陥っている場合があり、この場合の飲酒頼みの睡眠確保は好ましくありません。また学生時代から朝食を摂らない習慣の方がいると思いますが、就労者は学生と違い日々強い心身ストレスを受けて生活をかけて勤務を継続しているため、朝の血糖値低下から思考力や集中力の低下に繋がり、業務効率の低下や業務ミスも起こりやすく、これを契機に心身疲労が蓄積しメンタル不全に陥る場合もあります。また不規則な時間の食事は胃腸障害の原因となる場合もあり、1日3食毎日決まった時間にきちんと食事を摂ることが重要です。さらに帰宅後や週末の自分の時間を短時間でも毎日確保することも自己ストレス発散に繋がり大事なことです。最低限の内容でしたが以上の点に留意しながら規則正しい生活リズムを確保することで慢性的な心身疲労蓄積を減らしてひとりでも多くのメンタル不全の発生防止に繋がればと思います。

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