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‘就労者のメンタル不全’ カテゴリーのアーカイブ

メンタル不全の就労者の診療していく上で重要なことは、精神科主治医が「就労継続性」と「復職準備性」を十分に理解した上で患者さんごとに異なる個人特性(性格特性や思考形式等)や就労や生活の状況を踏まえて、臨床場面に展開し的確な診断や十分な治療ができるかどうかということです。「就労継続性」とは従業員が生活と就労のセルフケアを実施しながら心身の変調を防ぎ勤怠なく勤務を継続していける能力のことです。「復職準備性」とは休職中の従業員が復職意欲の回復、心身症状の消失、生活リズムや心身体力の獲得、医療リハビリと産業カウンセリングの実施により、復職後の再発や再休職を防止出来る就労能力のことです。就労者の休職判定とは就労継続性の有無を判断することです。受診したらすべての方が休職になるわけではなく治療しながら就労継続する方もおります。休職になった方は薬物療法と精神療法だけではなく生活リズム療法や医療リハビリや産業カウンセリングを実施し「復職準備性」が獲得できたら復職許可判定となります。再発防止の観点から産業医や人事担当者や所属長と個別面談し復職前の職場環境調整(勤務制限も含む)も必要です。当院ではこのように事業場(企業)側にも理解の得られる就労者に特化した専門的な治療を実施しております。

メンタルヘルス田井クリニック(メディカルEAP埼玉)   田井 良輔

http://www.taiclinic.com

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就労者がうつ状態や不安状態や不眠や身体不定愁訴で勤務の限界に達しメンタルクリニックを受診し精神科専門医の診断の結果、医学的に休養と治療が必要であると判断された場合、休職診断書が発行されて休職を開始します。休職中は生活が怠惰になりやすく心身の体力も落ちるため、休職中は昼寝を避けて消灯時間と起床時間と食事時間を一定にして規則正しい生活リズムで毎日を過ごす必要があります。定期的な外来通院加療で薬物療法と精神療法と生活指導を継続する必要はありますが、うつ状態や不眠状態が軽減したら徐々に職場の上司や人事総務や産業医と電話やメールや面談で連絡を取り職場環境調整や対人関係調整を行う必要があります。抑うつ気分の回復→生活意欲の回復→思考集中力の回復という順にうつ状態が徐々に緩和されてくるので無理のないペースで読書やパソコンなどの思考集中力の訓練や精神的体力確保の訓練を行いながら毎日の散歩や軽運動で身体的体力の維持増進も併行して行っていきます。復職の焦りや職場への自責感ではなく自分のみで考えて復職意欲が高まってきたら心身体力の回復具合や対人接触疲労の有無を確認しながら復職許可を行い、職場の上司や人事総務や産業医と復職部署や復職日程や保護勤務の設定を検討してその間は図書館等を活用した半日から終日の外出訓練や復職1~2週前から復職場所への朝の通勤訓練を行い、復職後は産業医や人事総務の設定した保護勤務計画(復職支援プログラム:職場で作成できない場合は当院作成)で約1~2週ごとに段階的に勤務負荷を上げていきます。この間のフォローアップ通院は再休職防止対策上必要不可欠です。また休職開始から復職後の通院中において患者さんご本人の許可を得た上での精神科主治医と産業医や人事総務担当者との情報交換や連携体制は復職を成功させて再休職を防止する上で非常に重要な点です。精神科専門医はメンタル不全の診断と治療を行うだけではなく患者さん自身が自主的な向上心を持ちメンタル不全を克服していくことを適宜アドバイスして心身健康な安定した就労状態を目指して総合的にサポートしていく必要があると思います。

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2011.5.24

6月病

新入生や新入社員が厳しい受験戦争や就職戦争を勝ち抜いて意気揚々と4月に学校に入学したり会社に入社するのですが、約1ヶ月後にその緊張の糸が切れてホッとするような時期に心身の疲労がどっと出て生活全般が無気力で憂鬱な気分になってしまい、一過性の軽症のうつ状態に陥ってしまうことがあります。このような状態を精神科専門用語ではなく俗語ですが「5月病」と言います。自然経過で症状が軽快する場合は問題ないのですが、うつ状態や不安状態や不眠で勉強や勤務が継続して困難になる場合は心療内科での適切な診断や治療の対象になる場合があります。また新入社員において4月に1ヶ月間の新人研修を経て5月に実業務を開始しその業務ストレスや対人ストレスが蓄積した1ヶ月後の6月に心身の不調が現れることをこれも俗語で「6月病」と言います。「5月病」も「6月病」も精神科診断的には「適応障害」であることが多いように思いますが、うつ病や気分変調症等の感情障害の発症やパーソナリティ障害等の元来の人格や性格の問題の反応症状である場合もあるので安易な自己診断は危険です。新入社員だけではなくすでにキャリアのある社員であっても4月や9月は異動や転勤の時期なので、その1~2ヶ月後の5~6月や10~11月は職場の勤務環境変化に伴う業務内容ストレスや対人関係ストレスについていけずにメンタル不全を発症し、うつ状態、不安状態、不眠、身体不定愁訴(頭痛、肩こり、めまい、吐き気、胃痛、下痢、動悸、発汗、息苦しさ等)が出現し、勤務や出勤が困難になり心療内科を受診したり休職せざるを得なくなる場合があります。ストレスを早期に自己察知してうまく日々の気分転換を心がけて十分な睡眠や食事を確保し、もし自己解決が出来ない場合は直属の上司や産業医に相談して問題の解決を早期にはかることでメンタル不全の発症の早期予防に繋がると思います。



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慢性的に業務多忙で帰宅時間が遅くなり慢性的に寝不足となってしまい、心身の疲労感が日々蓄積して就寝しても週末を過ぎても疲れが抜けない状態になることがあります。具体的な症状は全身がだるい、首や肩や腰のこりや痛み、頭痛やめまい、胃もたれや下痢や便秘、気分の落ち込みや無気力感、不安感や動悸や息苦しさ、ソワソワ感やイライラ感、不眠などの症状です。実際に具体的な職場内のストレスがなくても慢性疲労蓄積でこのような状態に陥ることがあり、すべての方ではありませんが生活習慣の改善で症状が軽減できるケースもあります。まず十分な睡眠時間を確保することです。365日の心身疲労の蓄積を回避するには最低1日6時間は十分な睡眠時間を確保したいところです。安定剤や睡眠薬を飲むときはアルコール摂取は禁忌ですが、一般の方が飲酒で睡眠を確保している場合に慢性的に眠りが浅くなったり夜中に何度も起きてしまうような状態はアルコール自体の眠りを浅くする作用が出ている場合やすでにうつ状態に陥っている場合があり、この場合の飲酒頼みの睡眠確保は好ましくありません。また学生時代から朝食を摂らない習慣の方がいると思いますが、就労者は学生と違い日々強い心身ストレスを受けて生活をかけて勤務を継続しているため、朝の血糖値低下から思考力や集中力の低下に繋がり、業務効率の低下や業務ミスも起こりやすく、これを契機に心身疲労が蓄積しメンタル不全に陥る場合もあります。また不規則な時間の食事は胃腸障害の原因となる場合もあり、1日3食毎日決まった時間にきちんと食事を摂ることが重要です。さらに帰宅後や週末の自分の時間を短時間でも毎日確保することも自己ストレス発散に繋がり大事なことです。最低限の内容でしたが以上の点に留意しながら規則正しい生活リズムを確保することで慢性的な心身疲労蓄積を減らしてひとりでも多くのメンタル不全の発生防止に繋がればと思います。

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「アサーティブネス」とは「自己主張すること」です。これは対人関係においてストレスをためないようにするコミュニケーション技術です。自己主張と言っても相手に自分の意見をごり押しすることではありません。「誠実」「率直」「対等」「自己責任」の4つの軸をふまえて相手との関係を冷静に客観的にとらえて相手の言動を誤解しない、自分の考えや意見をその場できちんと相手に伝えることです。うつ病になりやすい病前性格のひとつに「メランコリー親和型性格」というものがあります。真面目で几帳面で責任感が強く自分よりも他人を優先して気を遣い無理な業務を振られても「無理です」とか「出来ません」と相手に言うことが出来ずに引き受けて後から悩むような性格です。このような場合、もしその場できちんと無理なものは無理と断ることが出来たらどうでしょうか?その場においては確かにバツが悪くて相手から文句を言われるかもしれません。しかし長期的なビジョンで考えれば自己限界をきちんと相手に伝えることで自分自身の心身の健康状態を維持しメンタル不全に陥ることを予防できるのです。このように自分も相手も尊重しながらお互いに謙虚な姿勢でお互いの言動を誤解されないようにきちんと礼節を持ちながら自己主張していくことは日常生活や職場における対人コミュニケーションのストレス予防において非常に重要なことであると思います。

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「ワークライフバランス」とは「仕事と生活の調和」を意味する言葉です。企業間競争や成果主義の中で過剰労務や業務期限がタイトであることなどから我々はついつい仕事中毒(ワーカホリック)になりがちで私生活を仕事の犠牲にしてしまいがちです。この結果としてうつ病を中心とした精神疾患や身体疾患の3大疾病(脳卒中、急性心筋梗塞、癌)を発症する場合もあり、職場や上司からのラインケアだけではなく自己管理(セルフケア)も非常に重要になってきます。結果的に数年間のハードな勤務をしてその後休職や入院でリタイアしてしまうより、仕事と私生活のバランスを確保しながら長期にわたり安定した業務成績を維持する方が個人にとっても企業にとっても損失は少ないという考え方です。またこの言葉は女性の社会参画においてもよく使われており、「仕事・家事・育児・家庭・個人」のバランスを確保しながら、より良い充実した人生を送ることが心身共に健康を維持していく秘訣であり、女性にとってはアンチエージングにも関わる重要な問題でしょう。このような考え方が社会全体に浸透し個々のメンタルヘルスに寄与できればうつや不安や不眠に悩む人も減っていくのでしょうが、現実的には厳しい社会問題も多くまだまだ心療内科や精神科の医療機関の社会的に果たす役割は大きいと感じています。以前にマガジンハウスの雑誌編集長だった石川次郎さんが「自分は遊ぶために仕事をしている」と言った番組を見たことがあり、フランス人が夏に長期にバカンスを取るのと同様に非常に西洋人的な自由な発想だと納得した事を覚えています。

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就労者が何らかの理由でメンタル不全に陥ってしまい生活上の苦痛や勤務における苦痛を抱えたことで本来の健康な心身状態を維持できず心療内科や精神科を受診することが多いと思います。この中で外来受診から休職に至るケースは精神科主治医から見て精神医学的に勤務継続が困難であると判定した場合ですが、必ずしもすべての患者さんが最初から休職したいと思っているわけではありません。自己限界まで努力されてこれ以上頑張れないという状態で受診された患者さんが自ら休職を希望されてもこれは決して恥ずかしいことではありません。また一方で自己限界のメンタル不全に陥っても休職は出来ない、職場に迷惑がかかる、家族に申し訳が立たないと自責感にとらわれて自ら休職を希望されない場合もあり、この判断が正しいのかどうかは疑問です。どちらのケースであっても重要な点は「心身健康な状態をできるだけ早期に取り戻し再び元気に勤務が出来る状態に戻すこと」が治療上最優先であるということです。もちろん休職せずとも薬物療法と精神療法を行い症状が軽減緩和して勤務継続が可能な状態であれば休職する必要はありませんが、勤務継続が困難な状態であれば迅速に休職して自宅静養しながら通院加療や復職リハビリを行う必要があります。決してひとりで悩むことなくご家族や職場の上司や労務担当者や産業医や産業保健スタッフに相談されて、ご自身の勤務限界を感じる前に出来るだけ早期に症状がまだ軽微なうちに精神科医療機関を受診すべきであると思います。

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就労者が職場内の問題でメンタル不全に陥る場合、過剰労務、労務内容のストレス、対人関係のストレスのいずれかあるいはそれらが複合したものに起因することが多いとすでにこのブログで書きましたが、職場環境調整だけではメンタル不全の発症メカニズの問題を解決できない場合もあります。正確にメンタル不全の発症メカニズムを把握して今後の治療や再発予防を検討していくには、元来患者さんご本人のストレス脆弱性つまり性格、人格、発達等の個人特性を持っているかどうか、またメンタル不全に陥る精神科関連疾患や身体疾患や嗜癖問題等を持っているかどうかを十分に確認する必要があります。職場、本人、疾患、これら3つの関わりを総合的に把握してメンタル不全の発症メカニズムを分析し治療や復職を成功させるには初診時診察で時間をかけた問診による診断精度が要求されます。うつ状態の心理検査も補助診断として初診時の状態像の把握や治療経過中や治療後の病状回復程度を測定する指標として有用ですが、これに頼った初期診断をすることは問題があります。心療内科や精神科で適正に診断をするということは各種状態像(症状)を確認して診断基準を軸に慎重に鑑別診断を行うだけではなく、その患者さん自身の本来の個人特性や生活のバックボーンを主治医が十分に把握した上で精神医学の基本原則に従いながらきちんと治療内容に反映させていくことが非常に重要であると思われます。

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メンタル不全の発症原因のひとつに職場の業務内容のストレスがあります。たとえば新人社員であれば学生時代の生活スタイルからの著しい環境変化、社会人としてのミスや甘えの許されない正確な業務処理を迅速に要求される労務内容、業務内容に十分に精通していない中での業務課題の増加や業務難易度の上昇等、新人社員の就労上の環境変化や業務内容変化でメンタル不全に陥るケースが現代の若年層では少なくないように思います。また一般社員であっても職場の異動、転勤、出向、昇格、降格、単身赴任、海外赴任、会社の吸収合併に伴う業務内容の大幅な変化、会社の業績不振によるリストラに伴う残留職員に対する業務負担の集中化、メンタル不全で休職した同僚や部下の業務内容も兼務する業務負担、プレイングマネージャーやチームリーダーによく見受けられる自己負担業務に加えた部下の管理業務負担等、例を挙げればきりがありませんが様々な業務内容のストレスでメンタル不全に陥るケースがありこれも冷静に客観的に業務内容や業務負荷を分析し、心療内科で適正診断と適正治療を行うだけでなく職場の人事労務担当者や産業医に自ら相談していくことが重要であると思います。また元来のご本人のストレス耐性や性格傾向も発症に絡んでいた場合もありこの点もきちんと見極めながら主治医と産業医が連携しながら再発防止対策を組んでいく必要があります。

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就労者のメンタル不全になる原因のひとつに職場の対人関係のストレスがあります。対人関係が一方的ですべて自分の型にはめようとする上司からの度重なる叱責行為やパワハラ行為、またマイペースで社会的常識に欠けるあるいは業務処理能力に問題のある部下に対する労務管理ストレス、またその両者を兼ね備えたような中間管理職のストレス、さらに取引先や営業先や出向先における顧客相手や出向先社員からの無理な業務要求等、例を挙げればきりがありませんが、様々な職場環境で様々な対人ストレスが発生しこれが長期遷延化することで徐々に不眠状態や不安状態やうつ状態や体調不良に追い込まれて精神疾患を発症したり休職になるようなケースが少なくないように思います。そもそもの対人問題の発生原因がご本人の性格人格問題や精神疾患に存在する場合もあり、発症原因を客観的に冷静に見極めて精神疾患の診断と治療だけではなく、そもそもの対人関係問題の原因を整理理解し職場の人事労務担当者や産業医に自ら相談していく姿勢が問題解決と再発予防対策上必要であると考えます。

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