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2011.4.14

過敏性腸症候群(IBS)

通勤の満員電車や人が多い閉鎖空間、オフィスや学校の教室等で最初は食事前で空腹でお腹が鳴ることが恥ずかしい、少しお腹が動いてガスや便意がありそれを少し我慢する程度のことであったのに、それを意識する時間の経過で徐々に症状がエスカレートし自分が意識した苦手な場所で腹痛が起こり、ガスや便を公衆の場で失禁してしまうのではないかという恐怖感に悩むことがあります。このため苦手な場所を避けて通勤電車を途中下車したり(回避行動)、そこでまたガスや下痢発作が起きたらどうしようと悩む(予期不安)が起こり、日常社会生活に支障を来してしまうことがあります。これは「過敏性腸症候群」という腸管運動の機能異常の病気です。脳内のメカニズムはパニック障害と非常に似た動態になっていて大脳扁桃体の過敏反応から脳幹の青斑核を経由して自律神経発作が起こり、その対象臓器が大腸であるわけです。治療は脳の過敏反応を抑えて大腸の過敏反応を抑えるというダブルターゲットの治療になりますが、男性であれば治療専門薬のイリボーは保険適応の薬です。女性の場合はイリボーが保険適応ではないので脳と大腸の過敏を押さえる薬をそれぞれ使い、結果的にダブルターゲットの治療にします。男性でも症状が強い場合は多剤併用になる場合があります。ただし苦手な場面でなくても終日慢性的に腹痛や下痢発作がみられる、血便や発熱を伴っている、腹痛が排便後に軽快しない、体重減少があるというような場合は消化器内科での精密検査(大腸内視鏡検査)を行う必要があります。確率は低いですが腸管の器質疾患である「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」が見つかる場合があり、この場合は消化器内科で専門治療を行わないと問題は解決しません。過敏性腸症候群は先の述べたとおり薬物療法も大切ですが発症原因が腸管過敏だけではなく元来の不安を感じやすい性格や現実生活のストレスが非常に関与しているのでこの社会的ストレスを減らし心理面の不安感や考え方を整理していくことが心療内科における治療においては重要になってくると思います。

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